「アーリーステージ知財の価値評価と価格設定」 R.ラズガイティス著
菊池純一 石井康之 監訳
翻訳 ITPPグループ(三宅勇次 田中満生 藤井千之 肥沼徳寿 西本義男 平田滋昭 樋口大奉) 購入先 クリエイジ書店
構造改革は今、郵政改革に象徴されるようにホットな政治の話題ですが、この本が紹介しているものは改革を推進するひとつのツール(本質的改革を進めるための近道を歩む為のツール)と位置づけることができます。日本の社会は開国以来先進諸国に「追いつけ、追い越せ」で発展してきました。そして追い越したかに見えたのが、バブル絶頂期のロックフェラーセンタービルやコロンビヤの買収でした。しかしバブルの崩壊と共に実は追い越してはいないことに気が付き、いま追い抜く方法が求められています。
日本の技術は、初期の技術導入に始まり、それを改良・改善し自分のものとして磨きなおして世界最高水準に達しています。しかし、抜本的に追い抜くことが出来ないのが実情ですそれは、その根底にある技術が技術導入にあるからです。革新的理論やアイデアを基にした技術や製品が日本の力となるためには、アーリ−ステージ知財の価値評価と価格設定が重要となる所以です。いまだ市場に登場していない、アーリ−ステージ技術を価値評価し価格設定することが、市場への参入の最初の関門です。価値評価はその関門を通過する入場券を発行するためのツールとも言えます。
本書で紹介されている6種類の価値評価ツールは、オーソドックスなものですが、それが体系的に説明され、実務の中で培われた著者の体験として語られているところに、その価値があります。
著者ラズガイティスは、アポロの技術者を振り出しに、バッテル研究所の技術の事業化担当副社長を経て、現在独立のコンサルタントとして米国
発明者殿堂基金の評議員を勤めています。
本書は、知的財産の評価に関するAUTM(米国大学技術管理者協会)の入門書として利用されることが動機となって書かれたもので、初学者にとっては優れた入門書であると共に、実務経験が豊富な読者にとっても自らの知見を整理するのに役立つものです。さらに、米国の知財環境をも知ることができ、日本の知財環境をどのように改善すべきか考えさせられます。
本書の翻訳は神奈川県技術士会知的財産センター所属の技術士7名で構成するIPTTグループが翻訳していますが、技術と会計学との橋渡しを技術側から行っている点は注目すべき点です。
日本知的財産学会会員の菊池純一(青山学院女子短期大学教授)と知財評価の第一線で活躍する石井康之(株式会社ミレアホールディングス法務リスク管理部マネージャー)が監訳すると共に、その最先端の経験からの注釈は価値のあるものです。また、弁理士協会の推薦図書にも指定されています。